誕生まで

現行の医療制度では、心身共に成長してゆく子どものケアに対しての人的・物的資源の供給は、極めて限られています。子どもや家族のケアを担当する病院スタッフ(チャイルド・ライフ・スペシャリスト、メデイカル・ソーシャル・ワーカー、保育士)及びボランティアの援助を行うことは、私たちの理念「すべての子どもたちに命の輝きを」実現するために重要なことです。

20万県民の一人一人の署名が宮城県立こども病院の設立を実現に導いたように、すべての子ども、保護者、兄弟姉妹、医療スタッフ、ボランテアの支援を願う人々のパワーを結集し継続する力とするため、このNPOは誕生しました。私たちの理念でもある「すべての子どもに命の輝きを」達成するために、子どもや家族、そして医療スタッフやボランティアを支援するため、人的及び物的資源を持続的に供給する必要があります。その目的のためにこのNPOが設立されました。

NPOは社会的責任を担います。今後のNPO活動を介し、社会の信頼を獲得してゆくことが重要な課題です。我々のNPOは、子どもや家族に寄り添い共に歩み、子どもや家族の視点から提言し、行政・病院のよきパートナーとして成長することは、「すべての子どもたちに命の輝きを」と願う我々の理念達成のために必要なことです。

その後

私たちのNPOは「すべての子どもに命の輝きを」を理念として立ち上がりました。当初は、宮城県立こども病院での活動を希望するボランティアのための組織として構想されましたが、その役割は病院ボランティア・コーオーデネーターに移されました。さらに、宮城県立こども病院レストラン経営のコンペテションに知恵と勇気を結集し応募しましたが、残念ながら結実を見ることはできませんでした。しかし、病院ボランティアのための「講座」開催からスタートした活動はゆっくりとしたペースですが、宮城県立こども病院を含めたすべての病院の「すべての子ども」の世界へ拡がり、社会的な評価もいただいています。

未来

日本政府は、国連総会で採択された「子どもの権利に関する条約」(1989年)をようやく批准しましたが(1994年)、その実行は極めて不十分です。さらに残念なことに、国連「子どもの権利に関する委員会」は、日本政府に対して、49項目の提案と勧告(1998年)、ならびに再勧告(2004年)を行っています。この事実は、日本政府の「子どもの権利」に対する歪んだ姿勢を明らかにしています。私たちのNPOは、健やかな子どもの権利と共に、病む子どもの権利を確保し、子どもたちの命の輝きを守り続けていく決意です。

名称の由来:ワンダー・ポケットが生まれた時刻(とき)

新たに立ち上げるNPO法人の準備委員会の席上、私たちのロゴマーク「ラッコの親子」が紹介されました。それを眺めながら、みんなであれこれ思案しました。私の頭の中に浮かんだ最初のイメージは「ゆらゆら」「くるくる」「スロー・ウエイブ(ゆったりの波)」「スペイス・スロー(ゆっくりの空間)」「シー・フォオレスト(海草・海の森)」でした。長い間、記憶の倉庫の中で眠っていた言葉が浮かんでくるとても楽しい時間でした。みんなの「ループ」「楽っ子」「ぱお」も素敵でした:子ども・家族・医療スタッフ・ボランティアすべて心優しい仲間「ループ」、モンゴルの平原に点在するあたたかいテント「ぱお」、嬉しさで一杯の楽しい子どもたち「楽っ子」。この全てのイメージが秘められた時、「ワンダー・ポケット(不思議なポケット)」が誕生しました。

ある日、仕事の合間にほんもののラッコに会いに行きました。ラッコのお昼時間にぴったり出会い、メニューの「イカ」を沢山いただき、満腹なお腹を上にプカプカ浮かんでいるラッコの幸せなお顔を観ている時、「誰かに似ている」と感じました。「どらえもん」です。

お話は突然飛びますが、ザ・センス・オブ・ワンダー(The Sense of Wonder)という本があります。そのカバーには力に満ちた歌が添えられています。レイチェル・カールソンさんの詩です。

Words and pictures to help you keep alive
your child’s inborn sense of wonder,
and renew your own delight
in the mysteries of earth, sea and sky
“If a child is to keep alive his inborn
sense of wonder … he needs the companionship
of at least one adult who can share it,
rediscovering with him the joy, excitement
and mystery of the world we live in”- from Rachel Carson’s The Sense of Wonder

この詩には、子どもが生まれもつ感じる力を育むためには、その不思議な力を保ち続けるためには、地球や海や空などの世界に満ちあふれた不思議さに共感できる、寄り添い人(おとな)が必要であることが描かれています。

ふと「どらさん」には素敵なポケットがあったことを思い出しました。何でもありの「不思議」なポケットです。ラッコが描かれたロゴ全体も丸めのポケットのイメージに重なり、その時「ワンダー・ポケット」が生まれました。